大森元貴は生きている。
架空じゃない。AIでもない。
東京都出身の、27歳の男性。職業音楽家。
当たり前のようにこの国で呼吸をし、朝日の差し込む部屋でシリアルを食べ、シャワーを浴びながら空想する時間がない日は急いで髪を乾かし、靴紐をきつく結び、指を紙で切ったらきっと絆創膏をする。
終わらない夏のうだる暑さも、瞬きする度きらめく冬の気配も、貴方の肌は知っている。
行き交う人の正気の無さも、高級ホテルの密やな香りも、信じることの尊さも、きっと知っている。
ふいに底のない孤独に呑まれ、また浮かぶ音符。
情緒が材料。火加減も食すのも後始末も、最初は全部自分で。絶やしたいのに絶やさない感情。時に化学に頼り、ゲームをして忘れたり。
深い夜、瞳の中にひとりだけを映して愛でる。
この世界に2人しかいないみたいに、潤って、狂って、満たして。
身を削って紡いた音符も、心の臓まで鳴り止まない歓声、熱い視線も、全部なかったみたいに。忘れて、わすれて。自分が何者でも無くなる位に。
心も脳もないから、痛みもない。思考しなくていい。思考がない時間。時間がない空間。
貴方にも、そんな時があると思ってる。私にあったくらいなのだから。
私は貴方のA面しか見ることができない。
様々なものに彩られ、パッケージされた大森元貴にしか触れることができない。
もし最前列で目が合って指先が触れても、貴方がわたしの名前を呼ぶことはない。
「みんなの顔がよく見えてるよ」と貴方は笑う。
私はペンライトの星の海に浮かぶ一人として、ここだよ、と力いっぱいに手を振る。
貴方の香りも知らぬまま。
貴方は沢山のインタビューで、内側のようなものを語る。
生活における自分の短所は「とにかくめんどくさがり屋でだらしない」と語る。
私が知るのはストイックで拘りの強い、徹底された音楽への向き合い。
『どういう女性に惹かれますか?』
「男女問わずマメな人、素敵だなぁと思う」
友人が誕生日になった瞬間にお祝いの連絡を入れる貴方もマメだけど、「ねえごはん作って」なんて猫撫で声を出す日もあるのかな。
ポストやスレッズで見せる、捉え方によっては恋人のような距離感のブランディング。
情報は追いきれないほどある。最近はフルーツサンドにハマっていて、自分でよく作るのはトマトクリームパスタ。そんなことはどうでもいいんだよ。どうだっていい。
私が知りたいのは、今日食べたい物とか、抱きしめた時の体温とか、今感じていること。
商品としての大森元貴ではなくて、人として貴方に触れたい。ごめん、こわい。
けれども共に感じて、共に学び成長したい。無性にそう思う時がある。
「このアイシャドウ発色いいね」とか、「このケーキ甘すぎなくて美味しいね」そう女子高生みたいな会話をしたい。
一度でいい。一度でいいから名前を呼んでほしい。その瞳に私を映してほしい。
もし会えたなら、サインもハグもいらない。名前を呼んで欲しいんだ。私が終わるまで、私は何度も何度もあなたの名を呼ぶから。
会いたいなら、貴方を日常にしたいのなら、私がそこまで行くしかない。難関な道のりだけれど。怠惰な私は、その努力すらもせずにベッドの上で恋をしている。
知っているようで、とすら思わないほど、大森元貴のことを何も知らない。
貴方のとんでもなくどうしようもない面を、嫌いになることすらできない。
手を取り合って、同じ時を飲み込んで。
くだらない事で小競り合い、一人の人として貴方を愛すことはできない。
それでもあなたを愛していたい。
あなたの生き方を最後まで見ていたいと願う心が、わたしの生きる活力になる。
あなたの紡ぐ言葉とメロディーと、これから先を歩んでいきたい。
わたし一人の存在が声援のひとつになり、あなたが表現したい事を表現できて、全てではなかったとしても、どこか満たされて。心の底から幸せを感じる瞬間が人生において1秒でも長くあるなら、これ以上の喜びはない。
知らないけど、知ってるよ。
あなたが魂削って生み出してきた音たちを。
もし活動がしんどくなくて、いつまでも続けてくれていたなら、地元の小さなホールで歌って。
私はおばさんだけど、元貴もおじさまになってるからノープロブレムだね。
高い声が出なくても、nornの歌詞を忘れちゃっても、縦眉毛が出来なくなっても、会いたいよ。
たぶん生まれ変わっても忘れないよ。忘れたくないよ。愛してるんだよ。
だからいつかは忘れられちゃうなんて思わないで。歌わないで。悲しいから。
元貴が羽ばたく限り、同じ景色を見ていたい。
時には羽を休めても、深海に潜っても、熟れて色が変わっても。
ずっとずっとあなたを見ていたいけれど、いつ辞めてもいい。あなたの心と体が壊れるくらいなら歌わなくていい。
どうか、どうか幸せでいてほしい。
リアコであるということ。
あなたの幸せしか、願えなくなること。
それが、わたしの幸せになること。
#大森元貴